平成11年度2次隊 自動車整備 パレパレ、第95号(2001年 3月発行)より
インドネシア隊員6名で、各々の任地においてインドネシアの人々に対して11項目のアンケートを実施しました。インドネシアの人々が日本人をどのように考えているか知りたい、また、彼ら自身の「考え」を単に探ってみたいという好奇心からスタートしました。
<登場人物>
U: ロンボク島の村落部にて活動中。15歳から45歳にアンケート実施。
K: ジャカルタ。学生30人とおばさま方(30歳から60歳)に実施。
S: 病院関係者にアンケート実施。対象年齢30歳から40歳くらい。
H: スラウェシ島にて車関係の活動中。職場のおばちゃんとおじちゃんに実施。
Y: スラウェシ島ゴワ。職場4人。大工さん6人。家族3人に実施。
M: スマトラ島パレンバンで。施設の生徒(30人)と日本語を勉強している国立大学生(30人)に実施。
--------------------------------------------------------------------------------
質問1: 日本と聞いたとき最初に思い浮かべることって何?
U: 村人は、私以外の日本人や日本について知らないから、日本人・日本のことって私から知った「日本」になっちゃうんだよね。だから、村人にとっては、(私に何かって)言いたくないっていうのがあったと思う。TVとかで知っているかと思ったけど日本関係の番組って少ない!私の結果はデータにならない。でも、ちょっと町の事務所で質問すると・・・違うね、やっぱり。
S: 教育レベルによって変わってくるかなぁって。
M: うちのところは日本は「進んだ国」っていうのがほとんど。
S: でも、「伝統はそのまま維持してる」っていうのもあった。
M: 「自然がきれい」も。でも、「発展した国、進んだ国」が1番多いな。
U: うちの村のおじちゃんたちは、インドネシアと日本に違いがあることは知っていても、どう違うかを知らない。だから、答えられない。
S: それは、情報がないってことやね。
Y: 私は、3人まとめて聞いたりしたんだけど、そうすると最初の人と答えが同じになっちゃう。これもやっぱりわからないからだと思う。
H: 結局のところ、いろんな違いがあるにせよ、なんとなく「発展した国」ということかな。
K: ほかには「日本はかつてインドネシアを支配した国」がある。
U: え!そんなのあるの?
K: ぼくのところダントツですよ。教育を受けたおばさまの答えですけど。
Y: タナトラジャ(スラウェシ島中部)の人たちも同じでした。
S: でもそれは悪いイメージではない。解放軍という感じみたい。
K: 「昔のことは昔のこと」、と理解して今ではそれを悪く思っていない。占領以外の答えでは、「サクラ」だった。何かで桜の写真を見たことがあったらしい。
M: でも、どんな答えも悪い印象ではないよね。昔あったこともそれは昔のこととして理解して、今は今のこと考えてる。
H: 質問1の結果を聞いていると質問2と重複するところがあるように感じられるんだけど。
--------------------------------------------------------------------------------
質問2: 日本人と聞いたときに最初に思い浮かべることは?
M: よい面では「規律正しい」「賢い」「よく働く」「よい人」「時間に正確」。そして悪いイメージとしては「おこりっぽい」。ま、これは、僕のイメージなのかも知れませんが。続いて「ケチ」。これも、ぼくかなぁ。(不安になる。)「ロマンチストでない!?」「傲慢」。そんで、よくわからないのは、「声がでかい」「魚が好き」「カラオケが好き」「コーヒーダンドゥット(音楽)」以上です。
S: 「規則正しい」「よく働く」「寝ずに働く」とかやね、やっぱ。
H: 自分の任地では、自分たち以外には日本人がいないから、一般的なイメージを聞こうと思ったんだけど、結局は似た感じになるね。やっぱり「礼儀正しい」は多かった。
K: うちのところは、悪いことに関してはほとんどないですね。
U: 質問4のように「日本人の嫌いなところは?」って質問すると、限定して聞いているから当然嫌いなところが出てくるけど、「日本人のイメージは?」って聞くとだいたいは、プラスのイメージが最初に出てくる。質問しているのが日本人(自分たち)だからかもしれないけど。
S: 私たちのイメージがそのまま答えになっていたりする。
U: そう考えると村人が持つ自分たち(青年海外協力隊)のもつイメージってものすごくない?私個人のイメージが、その地域にいる人たちにとって「日本人」のイメージとして定着しちゃうんだから。
K: 二本松訓練所で聞いた「国の代表」っていうことを身をもって感じる。
一同: うんうん!そう思った!!
--------------------------------------------------------------------------------
質問3: 日本人の好きなところ。 質問4: 日本人の嫌いなところ。
M: 好きなところだと、すぐに日本人のよいイメージが出てきましたね。
K: 逆に嫌いなところは質問2のところと同じかな?
S: ジャワでは「ない」の答えが多かった。絶対あると思うけど、絶対に言わない。だって、ジャワの文化は「人の悪口なんてその人を前にしては絶対に言わない。Sopan santun(礼儀正しく上品)」だから。全国そうかもしれないけれど、その傾向がジャワは強いよ。陰では、何を言っているかわからんけどね。
K: 自分のところの生徒で考えると、ジャカルタなのにあまり日本人について知らないから「ない」の答えが多かった。
M: 宗教的な見地から、「お酒を飲むところ」「豚肉をたべるところ」が嫌いというのがあった。
K: ぼくのデータにいくつか少数のおもしろい答えがあったんだけど、たとえばね、これはぼくのことをいっているんだと思うんだけれど「インドネシア語が間違っている」(笑い)ほかに、「発展しすぎ」「同じアジアなのにヨーロッパばかり見ている」とか。でも1番多かったのは「ケチ」と「支配されたときの残酷さ」かなぁ。
U: さっき言っていたMさんの話題に戻ると任地では、自分の宗教と他人の宗教は切り離して考えているよ。だから、puasa(断食)中、私が断食やらなくても何も言わないもん。「おまえはイスラムじゃないだろ」って。押し付けたりしないなー。
S: それはそれ、これはこれという感じやね
H: やっぱり、面とむかって嫌いなところを言うのはちょっと難しかったかな。遠慮するよね。悪いところがあれば、それをいい方向に、もっていきたいから教えてくれっていっても、やっぱり「Tidak ada(ありません)」の答えが返ってくる。
Y: 私のところでは、「秘密」っていう答えもあったよ!
--------------------------------------------------------------------------------
質問4: 日本にいけたら何をしたい?
H: これも、また結構同じ答えが多いと思うけど?
U: たぶんね。
M: オオザッパにいえば、「勉強か働きたい」のどちらかだね。学校についていえば、今勉強していることを日本でもやりたいというのが多いかな。
K: 「観光に行きたい」とかないですか?
H: うちは1つあって、行き先は長崎・広島・東京だった。
Y: 「富士山をみたい」もあった。あとは、「盆栽を見てみたい」も。
S: そう。「盆栽を習いたい」というのがあった。さらに、「日本人が働いているのをみたい」もあった。わたしが、目の前で働いているのに、失礼しちゃうわよね、まったく!!
K: ぼくが感じたのは、もしこういう質問を日本人にしたら、観光旅行がダントツだと思うんですよね。それなのに、こっちでは、「勉強」とか「働く」とかが圧倒的に多いんですよ。
U: それってやっぱり、現在の日本とインドネシアの差なんじゃないかな?インドネシアの大部分の人は100万ルピア(約1万2千円)とかだしてどこかへ旅行しようなんて夢のまた夢じゃん。でもさ、あと、ほんとに(勉強とか)したいのかな?って思わへん?学生の態度を見ていると、そうは思えないときがあるよ。
M: それは、人によると思いますよ。日本語を習っている生徒の中にはできのよい生徒が沢山いますよ。
S: 日本で働いて帰ってくると、働いたっていう証明書をもらうことができて、いわゆる「はく」がつくんだよね。働いて帰ってきて、こっちで成功している人が多いから、みんなそれを求めているんじゃないかな。以前「Famili 100」というテレビ番組(日本のクイズ100人に聞きました!と同じような感じ)を見ていたら、「今1番勉強したい言語は何ですか?」という質問にもっとも多かった答えが「日本語」だった。英語は2位だったんだよ。それほどまでに、日本って国は思われているんだよね。この結果ってものすごく興味あるとおもわへん?日本語ができたら、それだけ、日本で働くことに近づけるやん。直接成功することにつながると考えているらしい。
K: そうだと思いますよ。
U: やっぱり村の人も「日本で仕事したい」って言ってたよね。
H: この質問はほとんど同じ答えが返ってきたね。それだけ、日本はインドネシアから(よく?)見られている、思われているということか。
--------------------------------------------------------------------------------
質問5: インドネシア人と日本人の似ていると思われるところ
S: 礼儀正しい
K: ぼくも結構沢山ありますよ。「礼儀正しい」と「社交的」は。
M: 「ない!」っていう答えもありますよ。
K: あります!あります!「似ているところはない。」という答えも結構ありますよ。
M: 「髪の毛の色が似ている」というのもある。
Y: 私のところでは、「同じアジア人」、「同じご飯を食べている人種」、「同じように文化が高い」という答えが多かったです。
U: ちょっとずれるけど、日本人はいまだにパンを食べる文化だと思われているよ。
H: 俺も言われた。「パンを食べなくて大丈夫なのか?」って。
S: それ、よう言うよね。
K: (赴任)最初のころは、結構言われますよね。でも、アジアの一員って思っているなら、知っていてほしいところですよね、これって。
S: お箸を使う文化だと知っているのに、不思議だよね。
M: 知っている人は、「日本人もインドネシア人もお米を食べる」と知っている。
K: それはありますよね。お米を食べるから、同じアジアの一員だねって。そのうえ、親日的。
U: 文化って人によって「同じ」っていう人もいれば、「違う」って人もいる。
K: 「ここら辺はこれだ」っていうように、まとめるのは難しいですよ。
一同: 人によるよねー。
--------------------------------------------------------------------------------
質問6: 世界中どこか1箇所だけ旅行できるとしたらどこに行きたいですか?
H: これも、結構同じ答えが出るかなぁって思ったんだけど。
M: ニホンが圧倒的!!
S: こっちは、サウジアラビアと日本が多い。
一同: おお、アラブ!
M: メッカはありました。また、シンガポールとか、オーストラリアとか、現実的なのもありました。
U: わたしね、質問するときに、「日本」って答えた人に、「サウジアラビアは行きたくないの?」って聞いたんだけど、サウジアラビアってどうも別次元のことって感じなんだって。単なる旅行ではなく、もっと別の意味あいそのものみたいな。
S: 私は単なる旅行で行きたい場所って聞いても、サウジアラビアって答えが返ってきた。
M: 私の場合は、日本語を勉強している生徒たちに質問しているから、答えはほとんど日本だった。
一同: それはねー。仕方ないよね。
K: でも日本が多いんですよね、みんな。
M: でも、宗教的にはアラブなんですね、やっぱり。
U: でもね、日本でお金をためてからアラブに行きたいって人もいた。お金かかるからね。
H: アラブと日本を比べると、僕のところはやっぱり日本だったね。
U: それは、私も同じ、日本だった。
K: 僕はこれ以外にも結構ありますよ。イギリス、フランス、イタリア、オランダ、アイルランド、そして多いのは、オーストラリア、意外に多いのが中国。
U: 私はアメリカが1人もいなかった!これは意外。アメリカの方が経済強いのにね。
S: アメリカ行くより日本のほうが近いからかな?
H: おれも、「なんで、日本を選ぶの?アメリカを選ばないの?」って聞いたら、「日本人のほうが優しいから」っていわれた。「礼儀正しいから日本がいい」って。「ヨーロッパのほうは態度が大きいからイヤだ」って言ってたよ。
M: アメリカに対し敵対心を持っている人、多いですよ。実際ドルとルピアの関係もあるし。
S: 「アメリカ人はインドネシアにきてもインドネシア語を勉強せえへん」って。それは、自分たち(隊員)に持っているイメージに対してかもしれないけど。
一同: 確かに、そうかもしれないけれど・・・・・
K: でも、自分としては(日本人が)、アメリカ人より親しく思っているってことがうれしいですけどね。
一同: うんうん。
U: ここまで、あからさまにインドネシア人がアメリカ人に対して、敵対意識をもっているとは思わなかったね。
--------------------------------------------------------------------------------
質問7: 自分の国に不足していると思われるのはなんですか?
S: 「教育」。
M: 「教育」多いですね。ほかには、「政治」「経済」「安全」そして「規律」ですかね。
S: 「スペシャリスト」とか「モラル」もあった。
U: ここでの答えでは、「学問関係」が多かった。あとは、経済に関係すれば「職場いわゆる働き口」がないこと。
M: それに関しては、システムのよくない面もあると思うんですよ。求人はあるのに、それが伝わっていない。システムが機能していないですよね。日本だったら、求人にしても、うまく流れができている。新聞に広告をだせば、日本ならみんな読んでるから伝わるけど、こっちでは、新聞読まないからそれも伝わらない。
K: 新聞には、求人がいーっぱい載ってますよね。
M: だから、情報がうまく伝わらないのが残念なんですよね。
Y: 私のところの返答に「インドネシアのシステムがおかしい」と答えている人がいます。
M: それは、単なる情報に限らず、いろんな問題を含んでいるかもしれないですよね。
U: それって、私たちの目から見ればわかるかもしれないけれど、でもその前にインドネシア人は各問題の存在さえも「知らない」ということが付きまとっていると思うから可哀想だなぁって思う。
S: やっぱ、それに気づかへんのは可哀想やな。
U: だって、なにも変わりようがないよ。その前のステップがかけているんだから。
S: 自分たちは外部者だから、それらの゙に気が付くかもしれないけれど、もし日本に住んでいて「日本の政治はどうですか?」といわれても、うまく答えられないと思う。
U: それと一緒で、当事者になるとわかりにくい。
S: だから、今は日本を離れて客観的に見ることができるから、日本のこともある程度わかる。それと一緒やと思う。
U: 「自分の国に不足しているもの」って、その国に住んでいる人たちにとっては、見つけにくいものなのかもしれないねー。