やる気と根気 |
20年度1次隊ジャカルタのラグナン国立体育学校で陸上競技を指導している体育隊員です。
実は1月末から約1ヶ月間、熱帯地方特有の病に倒れ、1週間ほど現地病院に入院しておりました。
精密検査の結果、アメーバ赤痢、デング熱、パラチフスと同時期に診断され、
JICA医療スタッフに
「こんなケースは初めてだわ。最高記録!すごい。」
と言われてしまいました。
医療スタッフの手馴れた対応のおかげでスムーズに入退院ができ、2月末に無事、職場復帰しました。
国を問わず関係者の方々には多くのご迷惑とご心配をおかけしました。
この場を借りてお詫びいたします。
閑話休題
再スタートした活動ですが、現在は選手指導に力を入れています。
選手指導は日々の中心的活動となるわけですが、ある程度リズムができてしまうと慣れが生じ、活動自体が惰性的になっていきます。
私自身、赴任して半年経った頃そのような状態でした。
そんな中、活動報告のため関連省庁である青年スポーツ省に赴く機会があり、
今後の活動方針と計画を話し合うことができました。
これがよい刺激となり、モチベーションが高まった・・・というところでの病気でした。
しかし、療養期間の後半は自身の活動をゆっくり見直すよい時間でした。
活動を再開して少し考え方を変えたことがあります。
それは、『選手の遅刻』に対する考え方です。
活動当初は平気で練習時間に遅刻をしてくる選手に戸惑いました。
インドネシア人の時間感覚は、日本人とは違いゆっくりしたものだと感じていたので、
どのように注意するのがよいか、またそれ以前に注意する必要があるのか、
といろいろ考えてしまったのです。
しかし、これは異文化間に内在する時間感覚の問題ではなく、
選手個人のモチベーションの問題であることを現地コーチは教えてくれました。
モチベーションが低い選手はどうしようもない、と半ばあきらめ気味ながら、
「厳しく注意していくべきだ。」という現地コーチ。
最初、彼らと同じように遅刻した事実を選手につきつけ反省させる方法を取りました。
しかし、一向に変わる気配はありませんでした。
なぜか。
私たちコーチは、遅刻という事実にばかり目がいき、そこだけを取り上げて注意していたことに気づきました。根本的な問題である選手のモチベーションの部分に働きかけていなかったのです。
このモチベーションは一般的に『やる気』と日本語で訳されます。
練習が待ち遠しくてたまらない選手、やる気に満ち溢れた選手が練習時間に遅れることはまずないでしょう(外的マイナス要因が働かない限り)。
そして彼らは積極的に自分の足りない部分を探そうとします。
だから、練習内容の吸収率も非常に高い。結果、そういった選手の多くは自己の競技力を伸ばすことができます。
ここラグナンで私が指導している選手はきっと入学当初は『やる気』に満ち溢れていたことでしょう。強くなりたい!!という思いがなければ入学できません。
そのやる気が、いつしか失われてしまった。
なぜか。このなぜかを深く問うことがここラグナンのコーチも、スポーツ関連省も、そして私自身も足りない気がします。
まず、現場にいる私たちコーチがこの問題に向き合って働きかけなければならないでしょう。
現地コーチは何度注意しても変わらない選手たちをこう言います。
「彼らはラグナンを去るべきだ(選抜選手を辞めるべき)。」と。
確かにこのように対処した場合、やる気のない選手はいなくなり次に来る新しいやる気のある選手たちが選抜されてくるので、即時的な変化を生むことはできる。
しかし、「いつしかやる気が失われてしまうという現状」に対しては何の変化はありません。
同じことの繰り返しです。
私は『選手のやる気が失われていく要因の一つにコーチの指導不足もある。』
そう考える必要があると思っています。
何が足りなかったかをコーチ自身が反省し指導を変える必要がある。
時間はかかりますが、この現状の本質的改善を目指すならば、それが一番の方法だと。
『選手のやる気を引き出すためにやるべきことは何か』
今、私はこの視点で選手指導を考えています。
そして、どうやったらこのことを現地コーチに理解してもらえるかを考えているところです。
まだまだ時間がかかりそうですが、地道にやっていきます。
選手の『やる気』を育てるには、指導者の『根気』が必要。
私の活動はまだまだこれからです。頑張ります。
私の「職場」。(国立ラグナン体育学校の陸上競技場)
●追記●
ジョグジャカルタでバレーボールのコーチとして活躍されたYoshiさん、
本当にお疲れ様でした!!
Yoshiさんが残された活動の軌跡は、私の活動の大きな道しるべとなっています。
この道が途切れないように活動を広げていきたいと思っています。
そして、Yoshiさんの日本でのさらなるご活躍をお祈りしています。
本当にありがとうございました。
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◎この隊員の他の記事
2008年11月21日 体育隊員活動紹介(ジャワ島ジャカルタ特別州)