19年度4次隊 助産師(ジャワ島レンバン県) |
慣れるのに精一杯の半年間で、一番辛かったことは食事があわなかったことです。揚げ物ばかりで、味付けも甘辛いものが多く、日に日に食欲がなくなり、体重も落ちていきました。そんな私を見て、心配した配属先の人やホームステイ先の人は「たくさん食べたら元気になる」といろいろな食べ物を差し入れてくれました。しかしそれらも揚げ物や甘いものばかりで、消化しきれませんでした。長年日本食に慣れ親しんだ私の体はインドネシア料理を受け入れるのに少し時間を要しました。
少しずつ生活に慣れて、自分で料理をする余裕が出てきてからは、時々自炊をすることで元気な体を取り戻していきました。また暑い気候に身体が慣れていくと、揚げ物や甘いものを欲するようにもなりました。
活動面においては赴任してから半年以上経過して、いくつかの診療所を巡回し始めました。現状を知りたいと思ったのと自分にとって活動しやすい診療所を見つけたいと思ったためでした。
しかし、現状を知れば知るほど自分のモチベーションは、下がる一方で自分はいったい何のためにここに来たのだろうと…悩む日々が続きました。その頃先輩隊員が母親学級を実施しているということで、モチベーションをあげるためと自分の活動に役立てるために、先輩隊員の活動を見学しに行きました。実際を知ることで自分の活動の参考とし、任地に戻ってからは自分の活動先でも取り入れようとしばらくは資料作りに没頭しました。
私は「妊婦体操教室」と称したミニ母親教室のようなものを実施しようと考えました。最初は活動先の診療所の村を7か所ほど選び、妊婦健診日などに合わせて、その村の担当助産師とともに実施しました。(私の発音ではなかなかうまく伝わらないので、作成した資料をもとに現地の助産師さんに説明してもらいました。本来は定期的に実施してほしかったのですが、現地の助産師さんたちの仕事の幅が広く、定期的に継続することができませんでした。
とりあえず定着するまで私が主体となって診療所で毎週妊婦体操教室を実施することにしました。約10か月間継続しましたが、一度も途切れることなく、妊婦さんが通ってくれたことは大変うれしかったです。
また、毎週通ってきてくれる妊婦さんとは特に仲良くなり、出産予定日近くの妊婦さん宅を訪問させてもらえたことで、自分自身の活動の幅を広げられました。診療所の中で接する妊婦さんたちと自宅で接する妊婦さんたちとは印象が異なり、よりリラックスして交流を持てたと思います。そんな関わりで得られた情報をもとに、現地の妊婦さんにとって役立つことはほかに何かできないだろうか…と考えながら活動の日々を過ごしていきました
また、体操に参加してくれた妊婦さんで出産された方を対象に新生児訪問も実施しました。
体操に通ってきてくれる人のほとんどは家が近く徒歩でも行ける距離なので、何か困ったことがあればすぐに診療所に来られる…というメリットがあったため、それほど深刻な悩みを抱えて過ごす褥婦さんには出会いませんでした。
しかし本来はその村の担当助産師による新生児訪問は1か月以内に2回となっていますが、担当助産師によっては生後1カ月まで訪問されないこともあるという現状を知り、あまりに少ないと感じました
ちょうどそのころ先輩隊員が「新人看護師のための地域看護」についてのセミナーを開催するということで、もっと地域看護の重要性を知ってもらおうと村で働く助産師を連れて参加させてもらいました
参加した助産師により地域看護の重要性をもう一度助産師間で再確認してもらいました。実施する内容はまだ見直しが必要ですが、決められた時期に新生児訪問をする重要性を再確認できたのではないかと思いました。
その他の活動としては活動先の助産師とともに「分娩監視装置モニター」の講習を受けに行きました。私の活動先にはWHOより寄与された分娩監視装置が分娩室にありますが、誰も使用方法や波形の読み方を知らないため、使用されずに保管されていました。
最初の頃は分娩時に参加し分娩監視装置モニターを装着し、一緒にいたスタッフに波形の読み方や装着方法を教えたり、助産師の会議時に作成した資料を用いて説明しましたが、要領を得られず、そのモニターを使用するに至りませんでした。そこで、分娩監視装置を使用している病院へ行き、講習を受けることにしました
実際に専門医より講義を受けると任地の助産師も十分な理解を得られ、診療所でも使用したいと報告されました。しかし機械の不具合が生じ、現在使用するに至らず活動を終えることは残念に思います。活動先の診療所は今後「第2レンバン病院」として拡大中であるため、分娩監視装置モニターを使用するようになるのもそう遠くないようです。今回の講習会で学んだことを生かしてもらえたらと思います。
全体を通してどれも中途半端となってしまい、これといった成果は得られませんでした。しかし日々の活動の中で村の妊婦さんたちと接する中、人と人とのつながりの温かさを感じました。近所中の人々が協力し合って子供を育てたり生活したりすることは、母親の負担も少ないし、子どもも安心して成長できるのではないかと感じました。
正しい知識の普及や生活環境の改善など問題はまだありますが、ゆったりとした時間の中で子育てをすることや地域全体で協力し合うこともとても重要なことだと感じました。今回の経験を何かの形で日本に還元できたらと思います。
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※この隊員の過去の記事※
●2008年9月19日掲載分(活動紹介)
●2009年5月27日掲載分(活動紹介)