19年度3次隊 栄養士隊員中間活動報告 |
19年度3次隊、ボネ県で活動中の、栄養士です。
インドネシア生活も、早いもので1年が経ちました。
最近、ようやく活動が少しづつ進んできたので、その様子を紹介します。
私は、現在、ボネ県保健衛生事務所の栄養課に配属されています。
ボネ県内には、36ヶ所のプスケスマス(地域保健所)があり、
その中から5ヶ所選んで、巡回しています。
そのプスケスマスからポシアンドゥ(地域保健サービスポスト)へも巡回しています。
巡回が、連続する日は、村に泊まり込みで行く場合もあります。
ボネ県の一番の問題は、gizi buruk(栄養不良児)が多いことです。
今回の巡回の目的は、村の実際の状況を知り、母親や乳幼児の状態を把握する。
プスケスマスやポシアンドゥのスタッフがどの様な対応をしているかを見る、ということです。
1月末から、巡回が始まり、現在、3ヶ所目を巡回中です。
今回は、その3つの村に紹介したいと思います。
【その1:カジュアラ村】
ボネ市内からの一番遠く離れており、市内から車で1時間強行った所にあります。
隣のシンジャイ県に近いです。
カジュアラのプスケスマス長は、去年11月にJICAの研修で日本に行ったこともあり
とても理解のある人でした。
施設内もキレイで、スタッフも真面目でした。
このプスケスマスは、24時間体制で看ているので、隣に看護師寮があります。
(その隣には、医師の家もある)
(写真:ポシアンドゥでの様子。体重を測っています)
海が近く魚もよく獲れるので、乳幼児の栄養状態もよく、母親の意識も高かったです。
ただ、海に近い分、衛生面に気をつけないと、すぐに感染症にかかりやすい環境なので、
注意が必要だと思いました。
村は、特に何もないところですが、夜は星空がキレイだったし、
海も近いし、棚田もあって、いいところでした。
今は、ピーナツの収穫期で、たくさんのピーナツができていました。
【その2:チェンラナ村】
市内から、車で1時間弱の場所にあります。
ボネ県内で唯一「TFC(Training Feeding Center)」があるプスケスマスです。
TFCとは、栄養不良児があると、プスケスマスに連れていき、医師・看護師・栄養士が、
その原因を見つけ、対処していく施設です。
(写真:栄養不良児の診察風景)
栄養不良児へのケアの流れは、
①ポシアンドゥにて、栄養不良児があった場合、プスケスマスに連れていく。
②看護師の問診→それを元に、医師が診察、薬の処方。
③栄養士が、生活・食事状況を聞いて、母親に栄養指導する。
④入院が必要な場合は、入院も可。
(ベット数3床、看護師が24時間体制で看ることができる。医師の家も近くにある)
在宅で看る場合は、1週間分の薬や栄養強化ミルク、ビスケットを配布して、
なくなったら、再度来てもらう。
⑤再来したとき、また診察をし、体重測定をし増減をチェック。
母親に状況を聞き、再度栄養指導。これを、状態が良くなるまで(最大3か月)続ける。
という、システムです。
ただ単に、「栄養不良だから、援助物資をあげる」というだけではなく、
ちゃんと原因を追究して、それを問題解決するために、栄養指導などをしてるのが、
すごいなぁ~と感心しました。
しかしながら、まだまだ栄養不良児もおり、母親の栄養に関する知識不足、
間違った世話の仕方や間違った伝統の方法を信じている人も多く、
衛生・栄養教育が必要だと感じました。
(写真:今回は、母親が亡くなっており、祖母が世話をしていたケース。
世話の仕方が分からず(ミルクではなく砂糖水をあげていた)栄養不良になった。
その後、体重は少しずつ増加し、現在もプスケスマスに通い治療している。)
また、チェンラナは、ワジョ県からボネ海に向かって、大きな川が流れています。
なので、衛生に気を付けないと感染症になったり、蚊や虫が多いので、
デング熱にかからないよう予防しなければなりません。
あとは、高床式の家が多く、その下で、牛や鶏の家畜を飼うことが一般的です。
ですから、そこからの感染も考えられるので、衛生教育が必要です。
また、トイレがない家も多く、川でトイレをする場合もあるので、トイレ設置の必要性もあります。
村の様子。チェンラナは、ボネ県内でも「かに」が有名です。
チェンラナの中心部にある塔の上にも、「かに」が立っています(笑)
養殖池があって、そこで獲れるそうです。
日本のかにと違って、小ぶりで卵やみそがたくさん詰まっています。
煮込んだり、サンバルと炒めていただきます。
【その3:ウラウェン村】
市内から、車で約30分くらいの場所にあります。
(写真:プスケスマスの巡回車も川を渡って移動します)
ここは、ボネ県内でも栄養不良児が多い地域です。
巡回していると、その辺りにある木のほとんどがフルーツの木!
バナナにパパイヤにスクン(パンの実)、ヤシの実、カカオ、
ドリアン、ミカン、マンゴー、ジャックフルーツ・・・・。
とにかく、何でもあります!!!
これだけ食材が豊富なのに、村に行けば行くほど、栄養不良児が多いです。
原因を聞いていると、「病気になってしまい、食べられなくなる。」ということ。
他の村でも言えることですが、ボネ県の栄養不良児の原因は、
「食物がなくて、栄養不良になる」のではなく、
「病気や感染症になってしまい、食べられなくなって、栄養不良になる」と言うことです。
ですから、やはり、衛生面についての教育が必要だなぁ~と改めて感じます。
その為には、スタッフと協力して、繰り返し講習会を開くなどをして、
住民の意識を変えていかなければなりません。
人の意識を変えることは、簡単にはいかず、難しいですが、
少しづつでも変わっていけばいいなぁ、と思います。